研究室だより 2024年5月号(担当:江連)

投稿日:2024.05.09

投稿者: 共通田中研究室

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みなさん、はじめまして。今月のBlogを担当するM1の江連千佳です。

4月12日には入学式がおこなわれ、修士課程に4名、博士課程に1名が、田中研究室に入りました。新しい環境ですが、先輩方が経験をシェアしてくださったり、気にかけてくださったりするおかげで、心地よく過ごすことができています。

〈写真〉(研究室メンバー全員での食事会の様子)

さて、今回のBlogでは、当研究室が携わっている、「越境的未来共創社会連携講座」 (通称: Creative Futurists Initiative)というプロジェクトについてご紹介しようと思います。Creative Futurists Initiativeは、2024年1月に発足した、SONYグループと学際情報学府の社会連携講座であり共同研究プロジェクトです。2027年3月までの3年間で、レクチャー、ワークショップ、実践研究、方法論研究、対外活動など多岐にわたる取り組みを予定しており、取り組みを通して、Critical、Creative、Collaborativeという3つのCを体現する越境人材であるCreative Futuristの育成を目指します。

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当研究室は、このCreative Futurists Initiative初の実践研究プロジェクトである「The Tech Bias」に精力的に取り組んでいます。人文系の研究室である田中東子研究室、アート・テクノロジー系の研究室である筧研究室と苗村研究室、そしてSONYグループの社員の方が6名程度のチームとなり、活動しています。私も、入学前からこちらのプロジェクトにお声がけいただき、活動に参加させていただいております。

初めは、全員の目線や前提知識を合わせるため、文献調査を行いました。『ラボラトリーライフ』、『デザインと障害が出会うとき』、『インターセクショナリティ』など多岐にわたる本を読み、グループでディスカッションしました。中でも印象に残っているのが、『ラボラトリーライフ』です。『ラボラトリーライフ』は、人類学者であるラトゥールが実験室でエスノグラフィーを行い、科学的事実が構築される様子を丁寧に記述した本です。人文系と工学系の人々が越境して共創を目指す本プロジェクトに取り組む際に必要とされる態度や心構えが記されているように感じました。グループのディスカッションでは、「理系の研究者は自分たちが近似したモデルを構築していることには自覚的なのではないか」「理系の論文でも、研究者自身のモチベーションを話すパートがあってもいいのではないか」「新しい技術が先かコミュニティが先か」など多様な論点が出てきて、時間が足りないくらいでした。

これからは、「テクノロジーとバイアス」をテーマに、チームで課題設定を行い、作品としてアウトプットを行う予定です。私は、アート作品鑑賞、特にインスタレーション作品が好きなのですが、自分でつくるのは初めてなので、とてもワクワクしています。Creative Futurists Initiative では対外的にもイベントを行っています。ぜひ、公式サイトから最新の情報をご覧の上、イベント等にご参加ください。皆さんとディスカッションできるのを楽しみにしています。

〈写真〉(記事内で消化しいた書籍の表紙画像)

 

[ご紹介した書籍の情報]

Latour Bruno & Woolgar Steve. (1986). Laboratory life : the construction of scientific facts. Princeton University Press. (=2021. 立石裕二[他](訳)「ラボラトリー・ライフ」. ナカニシヤ出版.)

Graham Pullin. (2011). Design Meets Disability. The MIT Press. (=2022. 小林 茂 [他] (訳)「デザインと障害が出会うとき」. オライリージャパン.)

Patricia Hill Collins & Sirma Bilge. (2020). Intersectionality. Polity Pr. (=2021. 小原理乃(訳). 人文書院.)